建築におけるゆるみ止めの種類と選び方|メリット・デメリットをわかりやすく解説

建築現場では、ボルトやナットの「ゆるみ」が事故や劣化の原因になることがあります。特に、振動や風圧、温度変化などの影響を受けやすい構造では、しっかりとしたゆるみ止め(緩み防止)対策が不可欠です。

この記事では、建築分野で使われる代表的なゆるみ止めの種類と、それぞれのメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。


ゆるみ止めとは?

ボルトやナットなどの締結部は、長期間使用するうちに、振動や荷重の繰り返しによって徐々にゆるんでしまうことがあります。

「ゆるみ止め」は、それを防ぐための機械的・化学的な方法や部材の総称です。


主なゆるみ止めの種類と特徴

種類   特徴メリットデメリット
ダブルナットナットを2個重ねて使用し、互いにロックさせる安価、高信頼性、振動に強い、特殊な工具が不要スペースが必要、作業がやや手間、高性能なゆるみ止めに比べると効果が劣る場合がある
ばね座金(スプリングワッシャー)座金にバネ性を持たせ、締め付け時の反力でゆるみを防ぐ安価、施工が簡単、広く使われている効果が限定的、長期的な緩みには弱い
Uナット(フリクションリング付ナット)ナットにカシメた金属製リング(フリクションリング)の摩擦抵抗(プリベリングトルク)でゆるみを防ぐ繰り返し使用可能、通常のナットと同じ工具で施工可能摩擦に依存するため軸力が低いと効果が不安定になる可能性がある
ナイロンナット(ナイロック)ナット内にナイロンリングを組み込んだもの再使用可能、振動に強い高温に弱い、繰り返し使用で効果低下
ハイブリッドボルト特殊なねじ山形状や構造を持つボルト・ナットセット非常に高いゆるみ止め効果、高い信頼性専用品となるため、コストや入手性が通常のボルトとは異なる場合がある
ハードロックナット偏心した凹ナットと凸ナットの組み合わせによる「くさび効果」で強力にロック強力なゆるみ止め効果、再利用可能、作業者スキルに依存しにくい比較的高価、通常のナットより部品点数が多い(2個1組)
ねじロック剤(接着剤)ネジの隙間に化学的に接着剤を充填・硬化させ、ゆるみを防ぐ安価、高い固定力、狭い場所にも対応分解が難しい、種類により再使用不可、温度などの環境影響を受けやすい

ゆるみ止めの選び方ガイド

目的や使用環境に応じて、最適なゆるみ止めを選ぶことが重要です。

使用条件おすすめのゆるみ止め
コストを抑えたいばね座金、歯付き座金
強い振動がある場所くさびロック、ダブルナット、ロックワイヤー
高温環境で使用するセルフロックナット(全金属)
繰り返し分解・再利用するダブルナット、セルフロックナット
永久固定したい高強度のねじロック剤

まとめ

ボルトのゆるみは、構造物の安全性や耐久性に直結する非常に重要な要素です。

適切な「ゆるみ止め」を選ぶことで、事故や劣化を未然に防ぐことができます。

建築現場では、コスト・信頼性・作業性のバランスを考慮しながら、状況に応じたゆるみ止めを正しく選びましょう。