― 地域の金物店が生き残るためのリアルな視点
建設業界では近年、BIM(Building Information Modeling)や 3Dプリンタといったデジタル技術が急速に普及しています。
「設計やゼネコンの話でしょ?」「金物屋には関係ないのでは?」 そう感じている方も多いかもしれません。
しかし結論から言えば、金物屋にとっても無関係ではなく、むしろ将来を左右する大きな分岐点です。
この記事では、BIMと3Dプリンタが金物屋に与える影響を、 メリット・デメリットの両方から整理し、 これから金物屋がどう変わるべきかを考えます。
BIMが金物屋に与える影響
メリット①:発注が「デジタル化」し、金物屋の役割が増える
BIMでは、建物の3Dモデルから金具・ボルト・アンカーなどの 数量や仕様が自動で集計されるようになります。
その結果、現場では 「正確な数量・明確な仕様に基づく発注」 が当たり前になります。
金物屋が次のような対応をできれば、大きな強みになります。
- BIM対応デジタルカタログ
- 型番付き3Dデータ(Revitファミリ、IFCなど)
「データを提供できる金物屋」は、 施工会社から選ばれる存在になっていくでしょう。

メリット②:現場の「調整役」としての価値が高まる
BIMでどれだけ精密に設計しても、現場では想定外のことが起こります。
- 納まりが合わない
- 寸法が微妙に違う
- 図面通りに施工できない
そんな時に求められるのが、 代替金物の即時提案です。
こうしたケースでは、 製作金物屋のスピード感や経験が活きます。

デメリット①:在庫型の金物屋は発注が減る可能性
大手ゼネコンでは、
- BIMデータで数量確定
- メーカーへ直接大量発注
- 物流センターから現場へ直送
という流れが進んでいます。
従来の「在庫して売るだけ」のモデルは、 縮小していく可能性があります。
デメリット②:データ非対応の商品は選ばれにくくなる
デジタル化が進むほど、 BIMで扱えない商品=採用されにくい商品 になります。
メーカーはもちろん、 金物屋自身も「データ提供できるか」が鍵になります。
3Dプリンタが金物屋に与える影響
メリット①:特注金物・一点物の需要が急増
3Dプリンタは、金属でも樹脂でも“一点物”を作るのを得意とします。
そのため、金物屋が次の役割を担えば、新たな市場が生まれます。
- 3Dプリントサービスの仲介
- CADデータ作成
- プロトタイプ制作
「こんな金物あったらいいのに」 を実現できる時代です。

メリット②:廃番金物・補修市場が広がる
古い建物の修繕では、廃番金物やメーカー不明部品が問題になります。
3Dプリンタを活用すれば、 形状を再現して代替品を制作することが可能です。
この分野は競合が少なく、 地域密着の金物屋が強みを発揮しやすい市場です。
デメリット:簡易金物は「作られてしまう」時代になる
施工会社や工場が3Dプリンタを導入すると、
- ブラケット
- スペーサー
- 端部キャップ
などの簡易金物は、 「買うより作ったほうが早い」 ケースも増えてきます。
標準品だけに頼る金物屋は市場を奪われる可能性があります。
金物屋の未来は「解決する店」へ
これから金物屋に求められるキーワードは次の3つです。
① デジタル対応(BIM連携)
- BIM対応データの提供
- デジタルカタログ
- オンライン受発注
② 特注対応(3Dプリンタ活用)
- 小ロット特注金物
- プロトタイプ制作
- 廃番金物の再現
③ 現場密着のスピード
これらは、金物屋の最大の強み。
現場の急なトラブルにすぐ対応できるのはBIMや3Dプリンタに対応した金物屋が有利です。
まとめ:変化は「脅威」ではなく「チャンス」
BIMと3Dプリンタの普及で、金物屋の仕事は確かに変わります。
しかしそれは、脅威であると同時に大きなチャンスでもあります。
これからの金物屋は、「現場の問題を解決するパートナー」へと進化していくでしょう。

